2022.01.05

【事業者向けセミナー】 「一歩遠くへ」「一日長く」の旅をつくる 開催レポート②

2021年11月17日(水)、観光・情報発信に関心のある事業者のみなさんに向けて、会津美里町ならではの「一歩遠くへ」「一日長く」の旅を生み出すきっかけづくりを一緒に考えることを目的としたオンラインセミナーを開催しました。
そのレポートの続編をお届けします。

登壇は、日本各地の観光計画にまつわるプロジェクトやツーリズム促進、メディア制作を行っているtarakusa株式会社の柿原優紀。後半は、会津美里町のターゲットと線的な体験コンテンツを打ち出す方法、体験型観光をつくるために知っておきたいルールについてお届けします。

「一歩遠くへ」の情報発信

では、会津美里町の場合、どんなターゲットが合うのでしょうか? 挙げられたポイントはふたつ。

ひとつは、「一歩遠くへ」。例えば会津美里町の場合、そこに観光客はいなくても、少し引いた目で見れば、会津若松まではたくさんの観光客が来ていることが分かります。

では、この人たちをターゲットと見込み、一歩遠くへ来てもらうための情報発信、会津美里で下車してもらうための情報発信はどうすればいいのでしょう。

まずは、「#会津若松」や「#会津旅行」というハッシュで、どんなものが挙がっているか見てみる。現在はGoogleで検索する感覚と同じように、Instagramで旅の情報を集める人が増えています。理由は、たくさんの写真と口コミを自由に見られるから。

 


(引用:たらくさ株式会社柿原レクチャースライドより)

「ぜひ、ハッシュタグをうまく併用して、会津旅行を計画している人に情報を届けるきっかけを作り、集客に役立てて、自分からの発信ツールとしてだけでなく、情報のコミュニケーションツールとして使ってみてください」

「一日長く」の旅をつくる

もうひとつのポイントは、「一日長く」。会津美里町の観光は、イベント型集客、点型集客になりがち。例えば、お祭りの日だけ日帰りでたくさんの人が来る「せと市」の日だけ人が集まる。あとは、神社好きの方が伊佐須美神社を訪ねてくれたけど、そのまま帰ってしまうという「スポットだけ訪ねる」というパターンが目立ちます。

このような集客を宿泊型、滞在型へと引き伸ばすことができれば、もっと町のことを知ってもらい、もっとお金を使ってもらうこともできるはず。

一日長く、宿泊型、滞在型とするためには、点的ではなく、段階を追った線的な体験コンテンツを打ち出す必要があります。線的な体験とは、簡単なイメージで言うと、せと市のお客様には宿泊していただいて、地元の器で地の旬のものを食べていただき、翌日は、陶芸体験として土づくりから成形をしてもらう。そして焼成が終わったら、できればまた受け取りに訪ねて来てほしい。そして、「また来年もっと上手なのをつくってみたいぞ」と再訪してくれるような、滞在型の旅を反復継続してもらえるようになれば理想的。もちろん、滞在環境を整え、移動手段が確保されていることも重要です。

 


(引用:たらくさ株式会社柿原レクチャースライドより)

「会津美里町は3つのエリアに分かれているのが魅力的なので、これらを繋いで滞在型観光として商品化してみる。また、只見線途中下車の旅として、沿線駅を繋いで滞在型観光として商品化してみるというのも面白いと思います」

観光にまつわる基本の法を知り、商材をつくる

観光シーンにおいては、いくつかの法が活動を阻んでいるのも事実。これらの法は、難しく聞こえ、なんとなくアクションのハードルとなりがちです。ただ、避けるべき点を捉えれば、活動可能な範囲も把握することができます。そこで、代表的な4つの法の知っておくべき点を、旅行業取扱管理者の資格を持つ柿原がダイジェストとして解説。登場したのは、旅館業法、道路運送法、旅行業法、通訳案内士法の4つ。

 


(引用:たらくさ株式会社柿原レクチャースライドより)

まず、宿泊や交通機関の手続きを含まない観光ルートの提案(無償)、体験企画(有償)、また、ガイド(有償)においては、専門免許の取得や登録・登記等が不要です。

宿泊事業者の場合、宿泊プランにガイドツアーが含まれ、ひとつのパッケージにされているケースも。その一例が佐賀県・唐津の「HOTEL KARAE」で展開される「ディープな唐津を地元ガイドと一緒に街歩き(建築アートと偉人編)」をはじめとするプラン。予約すると、宿まで迎えにきたガイドと一緒に街を歩きながら、選んだジャンルの学びを深めることができます。

これは「唐津ガイドクラブ」というまちづくり会社による運営。地域を愛するみなさんがコース作りからガイディングまで携わり、ガイドに「マエストロ」「プロフェッショナル」という二段階のランクがあることや、ガイドの指名制ができるユニークなポイントも。参加料は一回2,000円、最大10名で、ガイド登録された方々へそのうちの一部が支払われます。

観光客を受け入れるためには、SNSでの積極的な発信はもちろん、それぞれの企画における工夫や知識のアップデート、そして地域内事業者同士の連携が求められます。事例で挙げた各地の事業者をはじめとして、その地域に合う持続可能な体制が実験され続けています。

これから会津美里町を訪れる国内外の観光客に向けて、事業者のみなさんが会津美里町の魅力について改めて目を向け、このまちならではの「一歩遠くへ」「一日長く」の旅を生み出すきっかけになればと思います。

また、今後は事業者やコミットできる活動背景のあるプレイヤー、観光百人衆を集め、オープンなディスカッションの場、新たな活動のための情報収集、現状の課題にアクションする機会をつくるための情報交換の場をつくっていく予定です。「これをやりたい!」という企画をお持ちの方はぜひご参加ください。

 

文:『会津美里の日々』編集室

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